投資にまつわるSNS界隈の発言シリーズです。
今回は下記のような発言にスポットを当てます。
長期投資で8資産均等型を持ってたけど米国株式に変えてしまった。
これがイイか悪いかの答えは20年後にわかる。
色々形を変えては定型文のように様々な方に使用されている内容です。
この短い文章に含まれた意味を解説しながら、この発言に対しての思うところを述べたいと思います。
発言の意味とは?
バランスファンドのリターンがしょぼすぎるから乗り換えたろ
8資産均等型というのはほぼ確実に人気投資信託のeMAXIS Slim バランス(8資産均等型)を示唆しているでしょう。
私が長期投資のメインに据えている商品です。
この商品の特徴は国内・先進国・新興国の株式・債券・REITの組み合わせて合計8資産に均等に分散していることです。
この商品を選ぶ人は、値動きの異なる資産に分散することで比較的値動きをマイルドに、しかし着実に資産を拡大していくことを目的としているでしょう。
それかなんとなく分散していた方がよいと考えた投資初心者が選ぶことも多いです。
気になる方は商品提供元の三菱UFJ国際投信のHPを確認してみてください。
発言はこれから米国株式に変えてしまった。ということですね。
つまり8資産均等型はダメだから米国株式に乗り換えたよってことです。
もっと言うと、8資産均等型のリターンがしょぼいから今ノリにノっている米国株式にすべて買い替えたよってことです。
実際に二つのリターンを私が愛用しているmyINDEX 資産配分ツールの過去20年のデータを使って比較してみましょう。
- 8資産均等型 → 年利回り7.3%
- 米国株式 → 年利回り11.2%
実に年利回り3.9%もの差があります。
20年前に100万円を投資していたとすると、
- 8資産均等型 → 412万円 (+312万円)
- 米国株式 → 830万円 (+730万円)
なんと倍以上の差がついてしまったことになります。過去20年間は米国がノリノリでしたからね。
過去データのリターンを見る限り、乗り換えは正しい判断に思えます。
ただしこの発言の意図とはこのような「データに基づく判断をしたよ~」という純粋なものではなく、
米国株式が最強!!8資産均等型なんか選ぶ奴は馬鹿!!
と揶揄しているように・・・少なくとも私は確信しています。
でなければ定型文のように色々な人に使われることはないですし。
確かに8資産均等型は賛否がある商品ですがそれでも過去20年間は年利回り7.3%という立派な数値をたたき出しているようですし、実際に分散効果はありますので絶対悪ということではないと思いますけどね。
ただリターンが4%近くも低いという事実は受け入れて投資する必要はあります。
絶対米国株式が勝ちと確信している
これがイイか悪いかの答えは20年後にわかる。
一見「投資はどうなるかわからないけど」としっかり発言の予防線を張っているような文面ですが、結局「米国株式が勝ちだよね~」と煽っている文にしか見えません。
20年後に答え合わせしようね♪
のように明らかに乗り換え前の商品保有者を煽るような文面にする人もいるくらいです。
もう少しだけ詳しく解説します。
バランス型に比べて米国株式オンリーの場合はリターンが大きいですが、その反面リスクもそれ以上に大きくなります。
再度myINDEX様の過去20年データに登場してもらいましょう。
- 8資産均等型 → リスク 12.1%
- 米国株式 → リスク 18.1%
この値は標準偏差という考え方で、1標準偏差にあたります。
1標準偏差は約68%、2標準偏差なら約95%の確率でその値に収まるという考え方になります。
投資の世界ではほぼすべての確率をカバーできる2標準偏差を用いることが多いです。
投資におけるリスクとは値の振れ幅のことなので、8資産均等型なら約95%の確率で±24.2%の振れ幅が生じるということになります。
米国株式なら±36.2%ですね。10%も差がありますね。
データによると過去20年間の平時でこの振れ幅を経験するということになるということですね。
さてこのデータを出して何が言いたかったかというと、
米国株式の方がリスクが高く短期的に振れ幅の大きさに翻弄されるかもしれないけど、
長期的に保有すればリターンが高い分米国株式の勝ちでしょ!!
とSNSの発言から読み取れるわけです。
もはや勝ちを確信しています。
発言に抜け落ちていること
さてここからはこのSNSの発言に対する私の考えを述べていきます。
答えは20年後どころか数か月後にわかる可能性がある
長期投資で一番大事なことは「続けること」です。
無条件で続けることができるのであれば積極的にリスクが高い商品で運用してハイリターンを享受すればよいです。
しかしながら現実はそう簡単ではないということですね。
確かに過去20年のデータを見れば8資産均等型よりも米国株式に20年間投資し続けていれば何倍ものリターンを得ることはできました。
ただしその条件にはどんな値の振れ幅を体験しても保有し続けるといった忍耐力が必要です。
前述の通り平時ではリスクは2標準偏差で±36.2%になると言いましたが、これはあくまで平時なので暴落時にはこれを超えるマイナスを経験することになります。
95%外の5%の確率というやつです。
20年間投資していたら1年は暴落を経験するということです。(1年の間に経験する)
リーマンショック時の米国株式の値下がり幅はmyINDEXによると-46.6%でした。
なお結果そこまで下がったという数値であり、実際は-10%下がって、少し回復したと思ったらまた-10%下がって・・・
結果数年かけて-46.6%になった・・・というような値動きだったということを付け加えておきます。
※10%はテキトーな数値。イメージだけ伝われば。
増やそうと思って投資していたお金が増えない、むしろ投資期間によっては元本より減っている状態が数年または十数年続くという状態で投資を続けるというのは、
想像以上に忍耐力が必要に思えないでしょうか?
-46.6%という最大瞬間風速の値以上に暴落相場というものは、私たちの感情へ強く悪い影響を長く与えると考えてた方がよいです。
記事執筆時点ではまだまだ米国株式はノリノリですが・・・
いざ暴落相場になった時には自分がどう感じるか、どう行動するかどうなるかは予想できませんよね。少なくともわたしは予想できません。
そしてその暴落はもしかしたら数か月後に発生するかもしれません。
そこで狼狽売りしてしまえば・・・その時点で答えが出てしまいますよね。
分散投資でも同じでは?
確かに分散投資をしていても暴落は受けてしまいます。
しかし数値的には株式のみのポートフォリオに比べればリーマンショック時は10%近く下げ幅は小さくなっているようです。
ただそれより私が分散投資が強いと思っていることがありまして、それは瞬間風速的な下げ幅の小ささよりも資産額の回復力です。
語弊を恐れず単純に話してしまうと、株式が危うくなれば安全資産の債券が買われ始めるのでポートフォリオ全体としては上値方向の力も働くことになるのです。
すると暴落前の資産額に回復する期間が短くなることが期待できます。
つまりは値下がったことを経験する期間を短くすることが期待できるというわけです。
そしてそれは狼狽売りしてしまう前に暴落相場を乗り切れる可能性が高まることに繋がります。
私は長期投資は何より続けることが一番大事と思っていますから、事前に株式以外の資産も取り入れることで暴落を迎え撃ちます。
米国株式が今後も過去と同じ成績かどうかは関係ない
SNSの発言は完全に米国株式を信じ切っているように見えます。
米国株式一辺倒のアセットアロケーションにすることに対して反論する人も多いでしょう。
今後も同じかはわからない、他の国が隆起する可能性を捨てている等。
確かにそうですが、実は分散投資している私も米国経済は今後も世界をけん引する存在として君臨し続ける可能性が高いと思っています。
私のアセットアロケーションは以前の記事で公開していますが、メイン商品の8資産均等型に加えて米国株式を多く含むeMAXIS Slim 先進国株式をトッピングしていたりします。
米国株式をある程度信じているということになりますが、
それと長期投資を続けられるかどうかは別問題なのです。
SNSの発言は「米国株式は今後も成績が良い」と信じている発言と思いますが、その恩益を受けるためには前提とする「長期投資を続ける」ことが考えから抜け落ちています。
投資を始めて3年でこんなに含み益が♪投資始めてよかった~!20年続けたらどうなるんだろう~
という声も、きっと下落相場、暴落相場になれば一変するでしょう。
執筆時点で、過去数年間ではまともな暴落はなかったからです。
投資歴6年目の私も含めて、自分が暴落時にどう感じるのか、どう行動してしまうのか予想できないことと思います。まだまだ経験不足です。
確かに米国は強い、でも長期投資を続けられなくては意味がない。
20年に一度、暴落が予想できるのなら対策は取っておくべきです。
米国株式がどうだという観点ではなく一番大事な「長期投資を続けるためには」という観点でアセアロなりポートフォリオなりを考えるのが大事かなと思いました。