知らないと危険!アンカリングが長期投資家を失敗に導く心理学的理由

資産形成

長期投資では、暴落時に冷静でいることが重要だとよく言われます。

しかし、実際に投資を続ける中で多くの人が見過ごしがちなのが、アンカリング」という心理的な罠です。

キンチラ
キンチラ

この記事では、アンカリングが長期投資にどのような影響を与えるかを解説し、その対策について考えます。

このPRの後にも本文が続きます

アンカリングとは何か?

アンカリングとは、心理学において「最初に提示された情報や特定の数字が基準となり、その後の判断や行動に大きな影響を与える現象」を指します。

たとえば、セールで「元値10万円の品が5万円!」と書かれていると、5万円が割安だと感じてしまうのはアンカリングの典型的な例です。

実はこの現象は投資にも深く関係しています。

次の章では、アンカリングが具体的に長期投資の行動にどのような影響を与えるのか、そしてその背後にある心理的なメカニズムを詳しく見ていきます。

このPRの後にも本文が続きます

暴落への誤解とアンカリングの罠

株式市場が好調な時、分散投資の否定として「将来株式が50%暴落しても、その前に資産を100%増やしてやれば問題ない」という考え方をする人が多いです。

キンチラ
キンチラ

100%上昇後に50%減少すると利益はプラマイ0になるね。

一見合理的に思えますが、これはアンカリングの罠を見落としており危険です。

この考え方に基づく投資行動は、多くの場合、アンカリングによる心理的影響を増幅させるリスクを伴います。

含み益が増え続ける前提で市場を楽観的に捉えていると、その増えた資産額が「新たな基準」として心に定着します。

たとえば、資産が100%増えた後に50%暴落しても、元本が守られているにもかかわらず「一度増えた資産が半分になった」という心理的ショックを受けます。

このアンカリングによる精神的な負担は、特に暴落時に投資判断を誤らせる要因となります。

キンチラ
キンチラ

つまり、元本割れしていないのに心理的にはダメージを受けていることになるね。

利益が0からマイナスになっても、プラスから減っても、アンカリングによって同じように心理的ショックを受けてしまいます。基準が変わっているからです。

さらに、この考え方は分散投資を軽視し、株式一辺倒のリスクの高い投資行動を促すことが多いです。

その結果、暴落時の損失幅が大きくなり、アンカリングによる「失った感覚」がさらに強まる悪循環に陥る可能性があります。

このPRの後にも本文が続きます

アンカリングが長期投資に与える影響

アンカリングが投資家の行動に与える影響は、意識的に認識していないと大きな落とし穴となり得ます。

特に長期投資においては、過去の「増えた資産」や「利益」が無意識のうちに新たな基準として心に定着してしまいます。

この基準が崩れたとき、冷静な判断ができず、投資戦略に大きな影響を及ぼすことになります。

たとえば、資産が順調に増えているとき、その増加分が「当然のもの」として感じられ、損失が発生したときに大きな心理的ダメージを受けます。

アンカリングは、こうした感情的な反応を引き起こし、投資判断を誤らせる原因となるのです。

アンカリングが長期投資に与える影響は、主に次のような形で現れます。

このPRの後にも本文が続きます

含み益が減少した際の心理的ダメージ

投資が順調に進んで資産が増えていくと、その増加分が「新たな基準」となり、それが当然だと感じるようになります。

例えば元本が1,000万円だった場合に1,500万円に増え、その後1,200万円に減ったとしても、多くの人は「300万円失った」と感じてしまいます。

元本割れにはなっていないにもかかわらず、過去の増加分が基準となって「失った感覚」を強く抱くことになるのです。

この感覚が強くなると、冷静さを欠き、売却を決断するなどの感情的な行動に繋がることがあります。

このPRの後にも本文が続きます

増えた資産を基準にしてしまう傾向

また、増えた資産額が基準になってしまうことで、今後もそのレベルを維持しなければならないという無意識のプレッシャーを感じることがあります。

このプレッシャーが投資判断に影響を与えると、リスクを取る判断に慎重になりすぎたり、反対に過剰にリスクを取ったりしてしまうことがあります。

キンチラ
キンチラ

長期投資においては、これまでの成長を「自然なもの」として受け入れ、次の目標に向かって冷静に進むことが重要です。

このPRの後にも本文が続きます

過去の高値を基準にした行動

市場が一時的に高値をつけた時期を基準にすると、次に市場がその水準に戻らない場合、損失感や不安感が強くなります。

例えば、S&P500が一時的に2,500ポイントを超えた後、再び2,000ポイントを下回ると、元々の高値に対する強い執着が生まれ、回復を待てなくなることがあります。

キンチラ
キンチラ

「もっとリスクを高めた投資に変えて資産を早く回復させてやろう」って思うかも。

このように、過去のピークを基準にした行動は、冷静さを欠いた判断を引き起こし、長期投資の安定性を損ねる原因となります。

・・・

このように、アンカリングによる影響は一見無意識的なものですが、投資行動に深刻な歪みをもたらします。

このPRの後にも本文が続きます

アンカリングのショックを増幅する損失回避性

実はアンカリングのショックを増幅させてしまう人間の心理的傾向がさらに存在します。

それは損失回避性と呼ばれます。

損失回避性とは、人が利益を得る喜びよりも損失を被る痛みを強く感じる心理的な傾向を指します。

この特性は、私たちの意思決定に大きな影響を及ぼし、特に投資の場面で顕著に現れます。

たとえば、100万円を失う痛みは、100万円を得る喜びよりも心理的に大きいと感じられるため、損失を回避するための行動に強く駆り立てられるのです。

この損失回避性は、アンカリングと結びつくことで、私たちの投資行動をさらに非合理的なものにしてしまいます。

キンチラ
キンチラ

それでは、なぜ損失回避性がアンカリングを強化するのか、その仕組みを詳しく見ていきましょう。

このPRの後にも本文が続きます

基準値への執着を生む

アンカリングは、過去に経験した資産水準や価格を「心理的基準」として固定します。

この基準値に対する損失回避性が働くと、「その水準を割り込むこと」への恐怖が増幅されます。

たとえば、投資をして資産が1,000万円から1,500万円に増えた場合、その1,500万円が無意識に基準値として固定されます。

そして、市場の下落により資産が1,200万円に減少すると、本来元本から見れば増加しているにもかかわらず「300万円もの損失」として捉えてしまうのです。

この損失感は、損失回避性の影響でさらに過剰に強調され、冷静な判断を妨げます。

このPRの後にも本文が続きます

「取り戻すべき」というプレッシャーを生む

損失回避性は、「過去の高値に戻らなければならない」という心理的なプレッシャーを生み出します。

このプレッシャーがアンカリングによってさらに強化されると、投資家は次のような行動を取りがちです。

  • リスクの過剰追求
    一度設定された基準値(過去の高値)に戻すことを優先し、高リスクの商品や戦略に手を出してしまう。これは、損失を取り返すためにリスクを無視してしまう行動です。たとえば、S&P500のような株式一辺倒のポートフォリオに資産を集中させることも、この心理から生まれることがあります。
  • 非合理的な含み損の保持
    資産が減少した場合、「基準値に戻るまで売らない」という姿勢をとることがあります。損失を確定させたくない損失回避性の影響が、アンカリングによってさらに強くなるのです。その結果、状況を冷静に見直す機会を逃し、大きな損失につながる可能性があります。
このPRの後にも本文が続きます

損失を回避しようとしてさらに損失を拡大させる罠

アンカリングが強化されると、損失を過剰に意識するあまり、本来の投資戦略を見失うことがあります。このような心理状態では、次のような現象が起きやすくなります。

  • 暴落後の追加投資をためらう
    暴落時に追加投資をすることは長期投資では有効な戦略ですが、「これ以上の損失は耐えられない」という心理が邪魔をし、行動を抑制してしまいます。
  • 暴落後に追加投資をしてしまう
    逆に、定額積立投資を戦略としていたはずが暴落時に「ここで多く安く買えばの損失を早く取り戻せる」という心理が働き予定になかった追加投資を促してしまいます。その後にさらに大きく下落してしまえば損失はかえって大きくなってしまいます。
  • 非効率的な投資判断をする
    「過去の基準値に戻すこと」を目的に短期的な取引を繰り返し、結果としてリスクを拡大させたり、手数料などのコストが増加したりする場合があります。
キンチラ
キンチラ

このように損失回避性とアンカリングが組み合わさると、投資家にとって大きな心理的な負担となります。

このPRの後にも本文が続きます

アンカリングの罠から抜け出すための対策

アンカリングの影響を受けずに長期投資を続けるためには、意識的に自分の思考パターンを見直し、冷静な判断を保つための工夫が必要です。

キンチラ
キンチラ

この章では、アンカリングの罠から抜け出すための対策をいくつか紹介します。

このPRの後にも本文が続きます

目標を明確にし、進捗を定期的に確認する

長期投資においては、投資の目的や目標を明確に設定することが重要です。

「将来のための資産形成」「退職後の生活資金」など、自分が何を目指して投資をしているのかをはっきりさせておきましょう。

目標を明確にすることで、短期的な市場の変動に対して感情的に反応することなく、冷静に投資を続けることができます。

また、定期的に投資の進捗状況を確認し、ポートフォリオのバランスや目標達成に向けた進捗を見直すことで、過去の成果に基づくアンカリングを避けることができます。

キンチラ
キンチラ

利益が減ってしまっても、当初定めた目標に対しての進捗に問題が無い場合もあるはずです。再確認しましょう。

このPRの後にも本文が続きます

分散投資を心がける

アンカリングによって特定の銘柄や市場に依存し大きな下落のショックを受けることを避けるためには、分散投資が有効です。

複数の資産クラス(株式、債券、不動産、商品など)や地域(国内外)に分散して投資することで、特定の市場の暴落や調整に対する影響を軽減することができます。

分散投資をすることで、特定の投資が思うようにいかなくても、他の投資が安定してリターンを生み出す可能性が高くなります。

このような戦略は、アンカリングによる過度な期待や不安を緩和する助けになります。

キンチラ
キンチラ

分散投資は「株式が大きく減っても債券が回復を助けてくれる」等、単一アセットへの投資にはない心の支えをもたらします。

私は究極を言うと、暴落のショックに対して仕組み的に対策するなら分散投資しかないと考えています。

いくらアンカリングの知識があっても、心のショックとその後に実行してしまう冷静さを欠いた判断を防げる保証はどこにもありません。

分散投資をしていれば確実にショックの度合いを減らせますし、「他の資産が助けてくれる」と考えられる心のよりどころを用意できます。

何十年先の目標を達成するために、長期投資を目標を達成する日まで継続しなければなりません。

つまりは冷静さを欠いた判断をする余地をなるべく小さくしなければならないのです。

いくら平時に精神を鍛えても、いざという時に自分の心がどうなるかは未知なのです。

キンチラ
キンチラ

自分の心という一番信頼できないものに懸けるのは相当なリスクです。

このPRの後にも本文が続きます

心理学的危険を乗り越えた先に

長期投資は時間を味方につける戦略であり、その成功には、相場の変動だけでなく自分自身の心理とも向き合う力が求められます。

アンカリング損失回避性といった心理的な罠を理解し、それを克服する方法を学ぶことが、長期投資を続ける上での大きな鍵となります。

市場は常に変化し、資産の増減は避けられません。

キンチラ
キンチラ

しかし、重要なのは一時的な変動ではなく、自分の目標に向かって進み続けることです。

心理的な罠に囚われず、冷静さを保ちながら計画を実行することで、投資の本質的な成果を手に入れることができるでしょう。