全世界株式(オルカン)に投資しておけば分散は完璧、という声をよく見かけます。しかし本当にそうでしょうか?
確かにオルカンは「地域分散」「業種分散」が効いている優れた投資商品ですが、為替の観点から見ると実は偏りがあります。
✅特に、円高に対する耐性が弱いという点は見逃せません。
この記事では、
- オルカンの分散の実態とリスク
- 円高リスクに有効な分散投資
- 為替リスクを見据えたリバランス戦略
この3つの観点から、オルカンに頼りきらない投資の考え方を整理していきます。

オルカンはたしかに万能っぽく見えるけど、「為替リスク」は意外と忘れがちだよ。
資産が育ってきた今こそ、「守り」の戦略も考えておきたいところ!
なぜオルカン保有者は円高を恐れるのか?

近年、インデックス投資による資産運用の裾野が広まり、特に米国株に連動する投資信託や、米国株中心の「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)(通称オルカン)」に投資する個人投資家が急増しています。
オルカンはその60%以上を米国株式が占めており、米国株の動向が大きな影響を与えます。

これらの投資商品は日本円建てで購入されるため、円安にシフトすれば円換算で資産が増加しますが、逆に円高に振れた場合、資産評価額が大きく減少するリスクが懸念されます。
円高の影響とは?
例えば、現在1ドル150円の為替相場が100円に戻った場合、ドル換算で評価額が同じであっても、次のような影響を受けます。
- S&P500の場合:
為替の影響だけで**–33%以上**の評価額の下落を受けます。 - オルカンの場合:
米国株の部分だけで**-20%**の下落となりますが、他のドル依存度の高い国(例:新興国)にも影響が及ぶ可能性があります。
どれくらいの影響か?
- -33%、-20%というのは、まさに暴落と言える水準の下落です。
- リスク許容度が低い投資家は、このような急激な下落を受けると投資を続けられなくなるかもしれません。
✅ 為替影響だけでこれだけの下落率が起こることに注目しましょう。
もし円高が進み、株安の影響も加わるダブルパンチが発生した場合、日本国内では**-50%や-60%**という大暴落も十分に考えられます。

十分に現実的なレベルで考えられるからこそ怖いんだよ!
米国依存が抗う方法は無い
インデックス投資の基本は「バイ&ホールド」。
つまり、購入した資産をそのまま保持し続ける戦略です。そのため、もし保有している資産が円建ての米国資産だけだと、為替の影響をそのまま受けることになります。
オルカンを買ってその口数を持ち続けるだけでは、円高が進んだ場合、資産評価額が下落してしまうリスクが避けられません。
一旦売却すれば値下がりは避けられますが、その後、逆に円安や株高で上昇した場合は機会損失になってしまう可能性もあります。
タイミングを予測するのは非常に難しく、インデックス投資家にとっては判断が困難です。

円高に振れる前に売却できればベストですが、それはインデックス投資の範疇を超えているので論外だよね。
結局、インデックス投資において米国主体の資産運用をしている場合、円高による評価額の下落は避けられないことになります。そのまま受け入れなければなりません。
分散投資のリバランスで円高を迎え撃て!

分散投資では、米国株だけでなく、他の国や資産にも投資を行います。例えば、以下のような分散先に投資することで、米国依存を抑えることができます:
- 日本株
- 新興国株
- 債券
- REIT(不動産投資信託)
これにより、円高の影響を和らげることが可能です。特に注目したいのは、リバランスによるバリュー投資が機械的にできる点です。
例えば、株式と債券を50:50の割合で投資した場合、時間が経つと株式の割合が高くなることがあります。そのままだと当初設定したリスク許容度を超えてしまうため、リバランスを行い、適切にリスクを調整する必要が出てきます。
そのためリバランスは結果として、常に高値売り安値買いの操作をすることになります。

逆に株安の時は債券の割合が増える。
リバランスを円高でどう活用するか
円安になっていると、米国資産の割合が大きくなっていることが予想されます。
リバランスを行うと、相対的に高くなった米国資産を売却し、安くなった日本資産や他の分散先を購入することになります。
これは正にバリュー投資の手法です。
- 円安で高くなった資産を売却し、相対的に安くなった資産を購入。
- 次に安かった資産が上昇した時、より多くの評価額拡大を見込めます。
利益確定で高い資産を売り、安い資産を買うことで、次回の上昇時に大きなリターンを得ることができます。

リバランスは年末1回など定期的に行うことで、タイミングを気にせずに機械的に実施できるから、インデックス投資家の範疇だよね。
分散投資の本質
分散投資は、リスクを下げるだけの手法だと思われがちですが、その本質は分散しつつもリバランスの効果などで安定的に十分なリターンを得る仕組みです。
このような戦略は「アセットアロケーション投資」と呼ばれます。
もちろん、時代の変化によって米国株式以外の資産がリターンで逆転する可能性もありますが、コツコツとリバランスを繰り返しながら投資を続けることで、そのリターンの差を縮めることができます。
リバランス購入先が債券でも効果あり

リバランスが株式間であれば、双方が上昇したり下落したりを繰り返しながら、リスクを抑えつつ評価額を増やすことができるのは想像しやすいと思います。では、株式と債券の組み合わせではどうでしょうか?
もちろん、株式と債券のリバランスも有効に働きます。
債券の特徴
- 債券はリスクが低い – 株式より値動きが小さく、全体的なリスクを抑える役割があります。
- 価値保存の役割 – 債券は、下落幅が小さくなるため、価値をできるだけ保存してくれるという特徴があります。
例えば、株式のみで投資していた場合、株価の大きな変動により評価額が大きく上下することになりますが、債券を組み込んだ場合はそのリスクを軽減できます。
債券の効果とは?
- 暴落時に下落幅を抑える – 債券は暴落時に安全資産として資金流入が大きくなる傾向があり、保有資産全体の下落幅を小さく抑えられます。
- 下落幅が小さく、回復が早い – 例えば、株式が50%下落した後の回復には+100%が必要ですが、債券を保有し30%程度の下落で済んだ場合、その後の回復には+43%程度で済みます。
この差は非常に大きく、回復に必要な上昇率が57%も少なくなるのです。
そしてリバランスにおいても、株式が下落した後、債券で価値を保存しておいた部分を利用して、安くなった株式の購入資金を工面することができます。
債券自体が持つ回復力に加え、リバランスのバリュー投資の効果によってさらに保有資産全体の回復力を高めることができるのです。

つまりリスクを抑えつつリターンを上げる効果があるってことだ!
また、現金とも比較されることが多いですが、
- 現金の課題 – 現金はインフレにより価値が下がってしまう可能性があります。
- 債券の利点 – 債券はリターンを生み、回復力があるため、現金よりも効果的にリスクを低減し、リバランスの際に利用しやすい資産です。
債券は、単に全体的なリスクを抑える目的だけでなく、リバランスを通じて評価額が高くなった資産を保存し、次のリターンを得るための資金として使えるという大きな利点があります。
分散先が日本債券でもよいのか

日本債券は、リターンがあまり見込めない資産とされています。リスクは低くなるものの、その分リターンも抑えられており、お荷物資産として見られることもあります。
しかし、日本債券は単にリターンが低いわけではなく、前述の価値の保存やリバランスにおいて大きなバリューを発揮する資産です。
日本債券のメリット
- 低リスクで価値保存
リターンが低いということは、裏を返せばリスクも低いということです。リスクが小さいため、安定的に価値を保持できる資産として有用です。特に、日本円を欲する人には為替リスクがないため、外国債券よりも価値の保存として適しています。 - 暴落時のリスク低減効果
市場が暴落した際、よりリスクの低い日本債券に資金が流入するため、資産回復の支えとなってくれます。これにより、株式などのリスクの高い資産が大きく下落しても、日本債券が資産を守り、回復を早める効果が期待できます。 - 過去の実績
日本債券はリターンが低いとはいえ、少なからず過去の実績として、長期的には上昇しています。インフレで価値が下がりがちな現金に比べ、債券は価値の保存と回復力を持つため、分散先として有力な選択肢となります。
米国債券との比較
米国株式のリスクを抑えつつ、十分にリターンを見込める米国債券も魅力的ですが、円高懸念を意識するなら、為替リスクがない日本債券への投資は十分に検討する価値があります。

暴落後に円高が進むと、米国債券での回復が遅れる可能性もあるから、為替リスクを考慮すると日本債券が選ばれる理由がわかるね。
日本に住む人にとって、日本円で生活し、物やサービスを購入するためには、円建ての資産が重要です。そのため、日本債券はその性質上、非常に合理的な選択肢となります。
円高が怖いという気持ちは大切にしよう

円高を怖いと感じることは、実はリスク許容度を超えた投資をしているサインかもしれません。
為替リスクに耐えられないと感じるなら、そのリスクを抑えるために分散投資を再考するべきです。
オルカンやS&P500一辺倒ではリスクが高すぎる
オルカンやS&P500に一辺倒で投資していると、為替リスクや市場リスクが過度に集中し、リスク許容度を超えてしまうことがあります。
分散投資は、単にリターンを犠牲にしてリスクを抑える方法ではありません。
むしろ、リスクを抑えつつ安定的にリターンを得るための有効な手法だと捉え直すべきです。
リバランスと気持ちの安定
「円高が進んで怖い」という気持ちが湧く時、その背後にあるのは、リバランスをしていないことが原因かもしれません。
リバランスをしていないと、いつの間にか為替に対して大きなリスクを取っている状態になっている可能性があります。
定期的にリバランスを行い、円安時の利益を確定して他の資産に振り分けていれば、円高に対する不安も和らぎます。
このような投資の仕組みがあれば、感情的な動揺を少なくし、長期的な投資を続ける上で大きな助けになるはずです。
長期投資は感情との戦いとも言えます。
負の感情—例えば、円高や市場の下落に対する不安—に抗い続けることが、成功するためには不可欠です。
ただし、頑張って耐えるという精神論ではなく、分散投資やリバランスといった投資の仕組みが、こうした感情の波に立ち向かうための強力なサポートになります。
最終的には自己判断で
もちろん、今後円安へ拡大する可能性もあります。最終的な投資判断は、この記事を読んでいる各自にお任せします。
しかし、もし「円高が怖い」と感じているのであれば、分散投資は長期投資を続けるための強い味方となってくれるでしょう。