お金はいくらあってもいい。
投資の世界においてもリターンが大きければ大きいほど良いとされています。
ただしそれは期待リターンではなく実現したリターンに対してです。期待リターンが高いことの裏には相応のリスクというものが存在します。
記事執筆時点の2024年6月現在、米国株が高いリターンをたたき出し、オルカンのような他国へも分散投資している投資信託はS&P500に連動する投資信託よりも劣後する状態が続いています。
インデックス投資における二大巨頭といっても過言ではないオルカンとS&P500。
いずれの派閥もあるわけですが今のところS&P500に連動する投資信託で投資をしていた方がリターンが出ているはずです。
どちらを選ぼうか悩んだ末にオルカンを選んだ方は少なからず面白くない感情を持っているでしょう。
ではS&P500を選んで「正解だったか」というと、インデックス投資という性質上そうではないのではないでしょうか。
さて、今回は章立てせずにコラムのように語っていこうかと思います。
インデックス投資というのはもっぱら長期投資に使われる投資手法ですから、おのずと投資する人の人生設計に関わるものになってきます。
その人生設計のために使用した投資商品、ここではオルカンやS&P500に連動する投資信託などですが、それらを選んで正解だったと思うタイミングはいつになるかというと、
人生がうまくいったときなのです。
もう少しかみ砕くとすると、投資で形成する資産を使う各々のライフイベントで必要なだけの資産を無事確保できた時です。
そのためにインデックス投資家は将来に必要な資産額に対して今からどれくらいの期待リターンの投資商品へ毎月積立していくのかを最初に設定します。
その思惑通りに、またはそれ以上に資金を確保できれば投資は成功なのです。
正解ではなく成功。
実は成功と表現すると同じように思えて若干違うニュアンスを与えます。
インデックス投資は投資信託・ETFを長期で運用することを想定する性質上、上手くいったかどうかの判断は長期で運用した後になります。
しかしながら優劣を付けたい人間の性なのか、今の時点でどちらが優位なのかを判断したくなります。
そこで出てきがちなのが「オルカンよりS&P500にしておいて正解だった」という表現です。
その時点でS&P500がオルカンをアウトパフォームしている様子を見て出てくる表現。みなさんもSNSなどで似通った表現を見たことがあるのではないでしょうか。
本当に正解なのかどうかはその時点の成績だけでは測れないことなのに、なぜかこういう表現が出てくるのです。
しかしこの「正解」という表現を「成功」と置き換えると、
「オルカンよりS&P500にして成功だった」
ちょっと違和感を感じますよね。
成功という表現は目標を達成したときに使われるものですし、二つを比べて使う表現でもない気がします。
インデックス投資においては選んだ商品が正解だったかどうかは長期の投資を経た後に資産確保に成功した時ですから、
もはや正解・不正解は存在しなくて成功・失敗があるだけです。
別に言葉遊びをしたいわけではないんですけど、
長期投資を完結するそれよりずっと前の状態。例えば60歳の老後資金を確保しようとする30歳時点の状態にて、
いまの投資成績だけを見て正解か不正解かなんて判断出来るのかといえばNOです。
なぜなら投資にはリスクがあるわけなのでいまの投資成績だけを見ても未来は不確定だからです。
今後も米国株が覇権を握り続ける可能性もあれば、他国に劣後する可能性もあり、米国が凋落する可能性も0ではありません。
インデックス投資においては国際分散を全くしない投資で暴落時に心が耐えられるかという問題も出てきます。
結局どんな商品でも、最後まで保有でき目標金額を達成すれば問題ないのです。
大きいくくりで「インデックス投資をしてきて正解だった」という表現は正しいかもしれませんが、インデックス投資に使う投資商品を比べて正解・不正解と判断するのは違和感を感じます。
確かに投資の世界ではよりお金を増やせる方が優位です。
しかしながら精々人生を支えるレベルでしか使われないインデックス投資においては、
その人の目標とするリターンが年率3%で済むなら3%を期待できる投資商品でよいし、7%必要ならもっと攻めた投資商品を選んでもよいです。
7%が見込める商品で割合が大きい資産クラスが好調な時は確実に3%の商品は劣後します。
忘れてはいけないのは高い期待リターンが見込めるということは相応の高いリスクを受け入れる必要があるということです。
インデックス投資においては最後までたどり付けなければ(途中で辞める、解約を迫られる等)、意味がないのです。
資産形成期に選んだ商品が正解かどうかなんて気にする必要が無いですしそもそも判断なんかできません。
一番最後に成功するために、欲しいリターンを得るためのリスクを如何に抑えるかを工夫したり、リターンが低くても元本を増やすための努力をして対処したりするわけです。
そこに注力してほしいです。
自分の保有していない他の投資商品の方が伸びていると気が気じゃない気持ちは十分理解できます。
でもいくらでもリスクを取って大きなリターンを狙いに行くことを望んでいるわけではないですよね?
人生でお金に困りたくない、しっかり将来に備えたいという想いでインデックス投資をしている人がほとんどだと思います。
インデックス投資は大きく外さなければ(コストが低く優良なインデックスファンドに投資さえできれば)高い確率で人生を支えてくれるだけの資産を増やし形成できます。
正解か不正解かではなく、自分の人生の成功のために、期待リターンが3%でも5%でも7%でも信じて長期投資を行いましょう。
インデックス投資はリターンが高い方が正義ではなく、自分の人生が成功することが正義なのです。