少しセンシティブなタイトルになってしまいましたが、伝えたいことをなるべく短いセンテンスにするとこんな感じになってしまいました。お許しください。
オルカンとはもっぱらeMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)のことを指しますが、
もはや言わずもがな、これ一つだけで全世界の株式をまるっと購入でき多くの個人投資家に支持されている投資信託です。
2024年1月から開始された新NISAの後押しもあって、オルカン一本による積立投資というものが一般国民の間でも広く認知され実行されています。
投資により自身の人生に必要な資金を自分で用意するという意識が定着することは良いことだと思う一方で、
実はこの状況は少し危ういと思うことがあります。
それがタイトルにつながっていくのですが、今回はこのことをお話ししたいと思います。
投資の出発点が投資商品になっている
どうにも「自助努力をしないと! ⇒ オルカンを買っておけば間違いなし!」
になっている気がします。
そこにはどのくらいをいつまでという計画性がないのです。
何となくオルカンを買っておけば安心だという想いで買っているだけです。
しかしそれは長期投資としてはあるまじき行動です。
投資商品の選定はその前段にライフプランニングが来るはずです。
つまりは人生におけるどの時点でどのような人生を送りたいかを考えた後、そのために必要な資金をどれだけ用意するかを考えるべきということです。
しかしながらオルカン(もしくはその他流行りの投資商品)を選ぶ人のほとんどはこれをしていません。
いや、正確には「正しくしていない」。
老後2000万円問題が認知された後、定年時の60歳までに2000万円を貯めておこうと目標をおいてる人も多いかと思います。
一見して前述の「どのくらいをいつまでに」ができているように見えます。
ただしその次にすぐにオルカンを選ぶという思考の飛躍が起きているのです。
60歳までに2000万円はわかった。でも投資商品はもとよりオルカンに確定しているのです。
酷い場合は「オルカンに投資しよう、じゃあ60歳までに2000万円を目標にしよう。」と逆の思考になっている人も多いです。
オルカンに投資することが目的になってしまっているのです。
別に何も変わらないじゃないか!ただ単にいちゃもん付けたいだけじゃないの?
いや、考え方に文句を言いたいのではなく、実害が出かねないんだよ。
このライフプランニングを考慮しない投資は長期投資を続けるにあたって致命的な問題になりかねないのです。それを次の項で話していきます。
必要以上のリスクを負うことになるかも
本来長期投資において「どのくらいをいつまでに欲しい」ということが決まったら次は、
どのくらいのリターン(利回り)が必要なのかを計算します。
〇〇万円を××年で毎月△万円積立して得られるには年率◎%のリターンが必要。という感じで。
インデックス投資の年間平均リターンは大体3~7%と言われています。
仮に計算の上20%など達成が難しい数値が出たら積立額を多くするなどの計画変更を行います。
こういう作業をオルカン投資家は行っていない可能性が非常に高いです。
では実害というのは何かというと、リターンの高さは裏を返せばリスクも高くなるということです。
オルカンが設定されてから5年しか経っていないのでデータが足りないため、同じく米国株式に多く投資している先進国株式の20年データを使用します。
ちょっと変わりますが伝えたいことを伝えるためには問題ありません
記事執筆時点のmyインデックスによると先進国株式の年平均リターンは11.1%、リスクは18.6%程度です。
暴落がしない平時で95%の確率で+48.3%~-26.1%(+18.6%×2+11.1%~-18.6%×2+11.1%)の間にリターンが収まるということですね。
では広く分散された8資産均等型はどうでしょう。
記事執筆時点のmyインデックスによると8資産均等型の年平均リターンは7.4%、リスクは12.2%程度です。
暴落がしない平時で95%の確率で+31.8%~-17%(+12.2%×2+7.4%~-12.2%×2+7.4%)の間にリターンが収まるということですね。
先進国株式よりも8資産均等型の方が振れ幅が縮小したことが分かると思います。
商品の良し悪しや未来の不確実性は置いておいて、欲しいリターンが7%だとしたらどちらを選ぶでしょうか?
7%を満足しつつもよりリスクの低い8資産均等型を選ぶことが理にかなっていると思うのではないでしょうか。
逆に7%のリターンでよい人にとって11.1%の過剰なリターンである先進国株式はリスクを必要以上に取り過ぎだということが言えます。
これはオルカンに置き換えても同じことが言えます。
仮に毎月の積立額を多く確保できもっと低い5%のリターンでよい人にとってはリターンが10%前後のオルカンはリスクを取り過ぎた投資になってしまうのです。
リスクをとは不確実性ですからプラスにも大きく振れますがマイナスにも大きく振れます。
もし大きくマイナス方向に進んだ場合は修正が効かないほどの資金不足に陥る危険性もあります。
リターンが高いのは良いことだとは一概に言えないのです。
もし「増えるならいくらでも増やせ」という意識で長期投資をしているならリスクのことを考えない危険な投資をしていることになります。
そんなことを言ってしまえばレバナスのようないくらでもレバレッジをかけた投資商品を買えばよいことになります。
ではなぜレバナスを買わないのか?それは「やり過ぎだ」と思っているからです。
であればオルカンに投資を検討するにあたっても「やり過ぎ」を考えるべきです。
現実のリターンが足りないことへの対処も想定しておく
とはいえ過去のリターンは未来を保証するものではないもの。
過去が好調なだけで将来はリターンが減るかもしれません。
そうなっては当初プランニングしたことが実現できなくなりますから何らかの対処が必要です。
投資を始めて徐々に目標の期日に近づいていくにしたがって「このままだと目標額を達成できそうにない」ことが計算で分かってくるはずです。
その時にはまたその時点からのプランニングを行うのです。(リプランニング)
推奨は積立額の増額です。
なぜならそれが一番確実性のあるやり方であり、その他、リターンの高い商品に切り替えることなどは期日が近づいている段階では危険だからです。
目標金額を下げることもできると思いますが、インフレしていく世の中ではあまり選択できないことと思います。
ある程度投資の想定リターンを抑えめに見積もっておくことも良い手段です。例えば現在10%のリターンであるなら7%と抑えめに考えておくなどです。
ただしこれはやり過ぎは禁物です。
例えば10%を4%などと極端に小さく想定すると、もっとリスクを抑えられる6,7%のリターンのものでよいという考えができるからです。
4%のリターンでよいのに必要のない過剰のリターンをかなり過剰なリスクを負いながら投資をしてしまうことになります。
本当に4%でよいならもっとリスク(不確実性)の低い投資ができるはずです。
私の感覚で恐縮ですが、大体-2%くらいを目安に考えておくくらいが良いかと思います。
実際のリターンが大きければ目標期日に近づくにつれてリスクが低い投資に切り替えるリプランニングを行えばよいのです。
プランニングは初めだけやればいいのではなく、逐次実施して計画が正しく遂行されているか監視して、必要に応じてやり直すことが必要です。
投資商品を持ち続けるだけの長期投資家の唯一の仕事といっても良いです。
いままで話してきたことに心当たりのある方は今一度立ち返り、目標リターンとそれに見合ったリスク、それを実現する投資商品を考え直してみてはいかがでしょうか。